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大阪高等裁判所 昭和35年(ラ)357号 決定 1961年1月26日

抗告人 森岡辰之助

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別紙のとおりである。

抗告人は、債権者安達幸次から昭和三四年九月二三日五〇万円を借り受けたことも、その担保のため本件競売目的建物について抵当権設定契約を締結したこともないと主張するけれども、原審記録中の第二番抵当権設定金銭借用契約証書、不動産登記簿謄本、昭和三五年三月一一日付内容証明郵便によると、抗告人は昭和三四年九月二三日債権者から五〇万円を弁済期昭和三六年九月三〇日、利息日歩三銭、毎年六月二五日、一二月二五日までに各同月末日までの利息を支払うこと、右利息の支払を怠つたときは期限の利益を失うべく、遅延損害金を年三割六分とする旨定めて借り受け、その担保のため自己所有の本件建物について順位第二番の抵当権を設定する旨契約したところ、抗告人は最初の利息債務弁済期の昭和三四年一二月二五日を過ぎても同月末日までの利息を支払わず期限の利益を失つたことが認められる。抗告人の右主張は採用できない。

抗告人は、昭和三五年三月一七日債権者代理人弁護士柳瀬宏に対し前示元利金債務について弁済の提供をしたところ受領を拒絶され、債権者受領遅滞の状況にあると主張するけれども、たとえ抗告人が同月一七日右元利金債務について弁済の提供をしたとしても、債権者が前示抵当権実行のため本件競売の申立をし競売手続開始決定正本が昭和三五年一〇月六日抗告人に送達されていることは記録上明白であるから、右送達によつて債権者は前示貸金債務の履行の催告をしたものというべく、これによつて債権者の受領遅滞は除去されたものといわなければならない。したがつて本件競売手続は許すべからざるものということはできない。抗告人の右主張は採用できない。

抗告人は、債権者は第一回競売期日を延期し第二回競売期日まで前示債務の履行を猶予する旨約したと主張するけれども、右主張を確認するに足りる証拠がないばかりでなく、たとえ右約定がなされたとしても、右約定をもつては本件競落許可決定以後の日時まで前示債務の履行が猶予されたものということはできず、したがつて本件競売手続は右競落許可決定当時及び現在において続行すべからざるものということはできない。抗告人の右主張は採用するを得ない。

その他記録を調べてみても原決定を取り消すべき違法の点は認められず、本件抗告は理由がないから、民訴法四一四条三八四条九五条八九条に従い主文のとおり決定する。

(裁判官 熊野啓五郎 岡野幸之助 山内敏彦)

抗告の趣旨

神戸地方裁判所昭和三五年(ケ)第一八五号競売事件について同裁判所が昭和三十五年十二月九日になした競落許可決定は之を取消す。抗告費用は債権者の負担とする。

との御裁判を求める。

抗告の理由

一、抗告人は債権者に対して本件抵当権の内容となる債務を負担した事実はない。抗告人はその妻と夫婦関係のことで紛争を続けている(現在別居中)が妻の実家と債権者は懇意な間柄であるため抗告人が妻の実家に対して借財した際妻の実家が債権者と共謀して貸主を債権者名義として貸借契約書を作成したものの様であつて抗告人としては債権者から金員を借入れた事実は全然ない。

二、ところで抗告人は妻の実家との紛争を当初好まず昭和三十五年三月はじめ債権者代理人柳瀬宏弁護士より本件抵当権の登記のある債務について支払方催告をうけるや昭和三十五年三月十七日奥村弁護士同道債務元利金すべてを持参提供したが夫婦離婚の問題と併せて解決する趣旨で柳瀬弁護士より受領を拒絶された。

三、次に本件競売申立が貞松弁護士が代理人となつて提起されたので同じく紛争を避ける意味で昭和三十五年十一月二十八日頃示談の申入れをし第一回競売期日は延期し第二回競売期日まで債務支払の猶予を得た。

四、以上の如く抗告人は債権者に対して債務を負担するものではなく、仮に負担するものとしても既に昭和三十五年三月十七日債務弁済につき支払提供し爾来受領遅滞にあつたものであり、仮にそうでないとしても、昭和三十五年十二月七日の競売期日においては期限が未到来であつたものである。

よつて競落許可決定は違法のものであつて取消さるべきものである。

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